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永遠平和のために~エピローグ

kanto12



永遠平和のために」~エピローグ

永遠平和から終戦、震災

 本書は「補説一」「補説二」「付録」と続き、最後に池内紀氏の解説がある。長期にわたって掲載してきたのでこの部分は省略し、今回で終わりとしたい(ただし、本書から派生したことで、書き足りないことがあるので、後日、追補するつもりです)。お付き合いいただきましてありがとうございました。これをきっかけに一人でも、本書を読んでいただければ望外の喜びです。

 今回の表題は、本書から引用したものではなく、読後感として全体を振り返ったときに思いついたことをつなぎ合わせた。

 「永遠平和のために」を読む3で書いた一部を再掲したい。
 ―印象に残ったのは人を殺したり「殺されたり」するための用に当てるのは「人間を単なる機械あるいは道具として他人(国家)の手にゆだねることであって、人格にもとづく人間性の権利と一致しない」というくだり。「お国のために」と言って戦死したり、死に至らずとも戦った人のそう思ったこと自体は否定せず、犠牲を悼むが、カントから見れば「お国のために」と言わせたことそのものが、個人個人の人格を否定していたということになろう。

 永遠平和のためにカントが説いた本論より外れている部分だとは思うが、全体を通して最も印象に残ったのが、人間を機械や道具と見なすという、この指摘だった。「お国のために」はカントが言及していることではないが、日本人の一人として自国の歴史を学んだとき、職業軍人ではない軍人となった多くの人々のこと、銃後で戦わされた人々のことなどを考えてしまう。

 宮本輝氏の長編「森のなかの海」の終盤、主人公の阪神・淡路大震災に西宮で遭遇し、命を取り留めた37歳の希美子と、奇縁で知り合った70歳の室谷典弥との会話で、先の大戦を経験し戦争がさらに長引けば出征したであろう典弥が「あのころ青春をおくった人間てのは、戦争が終わってからずうっと、心のどこかにうしろめたさがあるんですよ」と語る。戦争のため死んだ人たちに対する申し訳なさからだった。典弥とほぼ同年代である希美子の父がそもそも「うしろめたい」という言葉を使ったと、典弥は続けた。

 このうしろめたい気持ち、自分が生きていて申し訳ない気持ちは、映画「夕凪の街 桜の国」(原作コミックは読んでいない)で、広島原爆の被爆者となったが即死までは至らず、戦後を生きて13年経った20代の女性平野皆実が、「うちは生きておってもええんじゃろうか」と生きていることに負い目を感じて吐いた言葉とも重なる。

 たしか、井上ひさし氏の被爆者を題材とした芝居「父と暮らせば」でも、主人公の女性にそんな葛藤があったと記憶している。

 そして、希美子もまた、震災直後、夫と2人で逃げ、ほとんど肉体的には傷を負わずに済んだ。しかし、希美子は早くから、あの惨状のなか、救出にもあたらず逃げることに抵抗感を覚え、以後も何もしないで自分だけ助かったという負い目を持っていた。

 震災と戦争を並列して並べることは適切でないとは理解している。しかし、生きていることに負い目を感じなければならない人々の心中を想像すると、切なさに襲われる。そして、生き残って負い目を感じるような人々を人為によってつくってはならないと思う。

 そのような世の中が来るだろうか?百パーセント信じられる自分ではない。皆さんはどうだろうか。本書「付録」の最後にカントはこう記している。

 「永遠平和は空虚な理念ではなく、われわれに課せられた使命である。」

                                  (了)

テーマ : 紹介したい本
ジャンル : 本・雑誌

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Re: 永遠平和のために~エピローグ

そうですか、このシリーズも一応最終回なんですね。

これがきっかけで僕も本を読ませていただきました。
紹介が無かったら出会わなかった本だと思ってます。
こもれびさんには感謝です。

全部が全部理解出来た訳でもないですし暫く時間を置いて、また読み返してみようと思ってます。

永遠平和が実現するといいですよね。

Re: 永遠平和のために~エピローグ

ちょびちょび読んでいたら余計理解できないわ~と思い、このシリーズは一気に読ませていただきました
うぅ~~ほんと難しいですね^^;
一気に読んでも理解不能なところがいっぱいありました
分かりそうで分からない・・・なんとも気持ちが悪い感が残っていますが・・・
でも200年前にも言われていたことが、今の時代にも通じるってことは結局世界動向は変わっていないのかもしれませんね
だって・・・「隣合った人々が平和に暮らしているのは、人間にとってじつは『自然な状態』ではない。戦争状態、つまり敵意がむき出しというのではないが、いつも敵意で脅かされているのが『自然な状態』である。」ってカントも述べてるしね!
“襲われる”または“襲う”と身構えていることは、当たり前すぎるほどの当たり前なことであって、我々が祖先からニンゲンとして進化しても、この本能だけはしっかりと受け継がれてたことは紛れもない事実であって、もしこの本能を引き継がなかったら我々ニンゲンはここに存在しなかったのではと思います。
でも、これを回避させる策を考える知恵をニンゲンは進化と共に授かったのだから、平和を手に入れることは“不可能”じゃないんでしょうね・・・
私利私欲に包まれたニンゲンはその策を見出すことが可能なのかな???

とにかく・・・平和への道のりは長く険しいですね・・・

地球に寿命があるとしたら、それまでに平和を手に入れることができるのかな?

最後に・・・
こもれびさん、カントを大学時代に読んでいたって???
なんともまぁ・・・すごい!!

Re: 永遠平和のために~エピローグ

>でも200年前にも言われていたことが、今の時代にも通じるってことは結局世界動向は変わっていないのかもしれませんね。
ミイさんと同じことを感じながら、私もこの本を読みました。
人間の本能に、少しでも智恵が勝って、カントの言う永遠平和が、いつか訪れることを信じたいけれど…。

>生き残って負い目を感じるような人々を人為によってつくってはならないと思う。
そうですよね。「夕凪の街 桜の国」を私は漫画で読んだのですが、寂しさの漂う本でした。
先日、岩波ブックレットで「はだしのゲンはピカドンを忘れない」を読んだのですが、当時のことがよくわかりました。
負い目を感じるべきは、生き残った人ではなく、人為的に人を殺した者たちであるのに…と思います。

Re: 永遠平和のために~エピローグ

私も先日この本を手に入れました。
>「隣合った人々が平和に暮らしているのは、人間にとってじつは『自然な状態』ではない。戦争状態、つまり敵意がむき出しというのではないが、いつも敵意で脅かされているのが『自然な状態』である。
とカントは言っていますね。先日見たアナ・コルベロ展とも共通するところがあって、「狭い土地で人間は争いを繰り返している」。争うことは人間に備わった性なのかなぁ、と。
しかしだからこそ争わない方法を考えないといけないのですけど。

Re: 永遠平和のために~エピローグ

yoshiさん、詠んでくれてありがとうございます。
ぜひぼく以外の人の一人でも多くに読んでほしかったものですから。
ぼくのエントリーはきっかけにすぎず、核心は本の中にあります。

Re: 永遠平和のために~エピローグ

ミイさん、人間の進歩って錯覚なのか、あるいは意味をはき違えているのかと考えさせられました。
まだ本に当たっていないのなら、ぜひ読んでみてください。
ここに紹介したのは、本を手にとって読んでもらうのが意図したところですから。
信頼というものは、存在すると思います。
人対人で築かれるはずですから、国対国でも築くことは可能なはず。
カントのように冷徹な目で見られる人は必要でしょうが、あるはずと信じたいものです。

Re: 永遠平和のために~エピローグ

大空の亀さん、人間って本質は不変なのかも知れません。
だからといって諦めることはないとも思います。
それを知ることで解決できる道が開けてくるのではないかと。

残念ながら、人を道具にしてしまうような人たちには負い目など生まれない、たとえ生まれてもそのときには時既に遅しという段階になってからかも。
そんな人間をリーダーにしないことですね。

Re: 永遠平和のために~エピローグ

まめゆりさん、お買いあげありがとうございます>出版社の回し者ではありませんが(笑)
今回は、紹介することで一人でも多くの人に関心を持ってもらい、本を読んでもらえたらと思って始めましたので、入手したという報告をいただけると、とても嬉しく思います。
アナ・コルベロ展のことで思い起こしたのは、地球は球体だというところでした。

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